仮想通貨市場は、ここ数年で急速に成長し、世界中の投資家の注目を集めています。その中でも特にビットコインとイーサリアムは、市場をリードする主要な暗号資産として位置付けられています。これに伴い、投資家がこれらの資産にアクセスしやすくするための金融商品として、ビットコインETF(上場投資信託)とイーサリアムETFの導入が進められてきました。
ビットコインとイーサリアムのETFは、仮想通貨そのものを直接保有することなく、これらの資産の価格変動に投資する手段を提供します。しかし、これらのETFの承認には市場の成熟度や規制環境の整備が必要であり、多くの提案が行われる一方で、規制当局からの承認を得ることは容易ではありませんでした。
この記事では、ビットコインETFとイーサリアムETFのこれまでの経緯と現在の状況を年次ごとに整理し、これらの金融商品の将来について考察します。仮想通貨市場における重要なマイルストーンを振り返りながら、最新の情報を提供することで、投資家が今後の動向を理解するための一助となることを目指します。
ビットコインETFの経緯と現状
- ビットコインETFは、多くの試みと挑戦を経て、ようやく市場に登場しました。その過程を年次ごとに見ていきましょう。
年 | イベント |
---|---|
2013 | ウィンクルボス兄弟による最初のビットコインETF提案。SECによる却下。 |
2017 | SolidXおよびVanEckによるETF提案。SECによる却下。 |
2018 | CBOE(シカゴ・オプション取引所)によるETF提案。SECによる却下。 |
2019 | BitwiseおよびVanEckによるETF提案。SECによる却下。 |
2020 | Wilshire PhoenixによるビットコインETF提案。SECによる却下。 |
2021 | ProSharesのビットコイン先物ETF(BITO)がSECにより承認。ニューヨーク証券取引所に上場。 |
2022 | ValkyrieとVanEckのビットコイン先物ETFが承認。 |
2023 | 現物ビットコインETFの提案が続くが、SECによる承認は未だ実現せず。 |
2024 | 現物ビットコインETFをSECにが承認 |
2013年:最初の提案
2013年、カメロンとタイラー・ウィンクルボス兄弟は、ビットコインETFの最初の提案を行いました。
参考:米国のビットコイン先物及びETF市場の整備を巡る課題と展望
これは、投資家がビットコインを直接購入することなく、その価格変動に投資できる金融商品として設計されました。しかし、証券取引委員会(SEC)は市場の操作や流動性に関する懸念から、この提案を却下しました。この時点で、ビットコイン市場はまだ初期段階にあり、規制環境も未整備でした。
2017年:新たな試み
2017年には、SolidXおよびVanEckがビットコインETFの提案を行いました。これらの提案は、ビットコインの市場が成長し、より成熟したことを受けて行われました。しかし、SECは依然として市場の操作や詐欺のリスクを懸念し、これらの提案を却下しました。この年は、ビットコインの価格が急騰した年でもあり、規制当局の懸念がさらに高まりました。
参考:Founders of the VanEck SolidX Bitcoin Trust
2018年:CBOEによる提案
2018年、シカゴ・オプション取引所(CBOE)は、ビットコインETFの提案を行いました。CBOEは、ビットコインの先物取引を提供していることで知られ、ETFの運用に関する経験も豊富でした。しかし、SECは市場の操作防止策が不十分であるとして、再び提案を却下しました。この時期には、ビットコインの価格が大きく変動し、市場の安定性が問題視されました。
2019年:BitwiseおよびVanEckの再挑戦
2019年、BitwiseおよびVanEckは再びビットコインETFの提案を行いました。Bitwiseは、ビットコイン市場の透明性と流動性に関する詳細な報告書を提出し、市場の成熟度を強調しました。しかし、SECは依然として市場の操作や詐欺のリスクを理由に、これらの提案を却下しました。規制当局の懸念は、特に市場の監視と操作防止策に集中していました。
2020年:Wilshire Phoenixの挑戦
2020年には、Wilshire PhoenixがビットコインETFの提案を行いました。
参考:SEC to Decide the Fate of Another Bitcoin ETF Proposal This Week
この提案は、ビットコインの価格変動を平滑化するために、ビットコインと米国国債を組み合わせるアプローチを取っていました。しかし、SECはこの提案も却下しました。SECは、ビットコイン市場の操作防止策が依然として不十分であると判断しました。
2021年:ProSharesのビットコイン先物ETF承認
2021年10月、ProSharesのビットコイン先物ETF(ティッカー:BITO)がSECによって承認され、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場されました。
参考:BITOのチャート
これは、ビットコインそのものではなく、ビットコイン先物契約に投資するETFです。この承認は、ビットコインETFの歴史において重要なマイルストーンとなり、多くの投資家がビットコイン市場にアクセスする新たな手段を得ることができました。
参考:米国でビットコイン先物ETFの取引が開始、価格の上昇は年末まで続くのか
2022年:ValkyrieとVanEckのビットコイン先物ETF
2022年には、ValkyrieとVanEckのビットコイン先物ETFもSECによって承認されました。これにより、投資家は複数の選択肢を持つことができるようになり、ビットコイン市場へのアクセスがさらに拡大しました。先物ETFの承認は、市場の規制と監視の強化が進んだことを示していました。
参考:SECがValkyrieのビットコイン先物ETFを承認
2023年:現物ビットコインETFの課題
2023年には、現物ビットコインETFの提案が続きましたが、SECは依然として市場の操作防止策と投資家保護の観点から、これらの提案を承認していませんでした。市場の透明性と規制の強化が進む一方で、現物ETFの承認にはさらなる時間がかかると見られていました。
2024年:現物ビットコインETFの承認
2024年1月10日、SECはついに複数の現物ビットコインETFを承認しました。これにより、ARK 21Shares、Invesco Galaxy、Fidelity、VanEck、WisdomTree、Franklin Templetonなどの資産運用会社が提供する現物ビットコインETFが市場に登場しました。これらのETFは、ビットコインそのものに直接投資するものであり、投資家に新たな投資手段を提供されました。
参考:SECがビットコインの現物ETF(上場投資信託)を承認
参考:GBTCのチャート
承認されたビットコインETFは以下になります。
ティッカー | 銘柄名称 | 採用不可理由 |
---|---|---|
GBTC | グレイスケール ビットコイン トラスト(BTC) | 「外国投資信託に関する届出」がなされていない海外ETF |
ARKB | アーク 21シェアーズ ビットコインETF | 「外国投資信託に関する届出」がなされていない海外ETF |
BITB | ビットワイズ ビットコインETF | 「外国投資信託に関する届出」がなされていない海外ETF |
BRRR | バークリー ビットコイン ファンド | 「外国投資信託に関する届出」がなされていない海外ETF |
BTCO | インベスコ ギャラクシー ビットコインETF | 「外国投資信託に関する届出」がなされていない海外ETF |
BTCW | ウィズダムツリー ビットコイン ファンド | 「外国投資信託に関する届出」がなされていない海外ETF |
DEFI | ハッシュデックス ビットコイン フューチャーズETF | 「外国投資信託に関する届出」がなされていない海外ETF |
EZBC | フランクリン ビットコインETF | 「外国投資信託に関する届出」がなされていない海外ETF |
FBTC | フィデリティ ワイズ オリジン ビットコイン ファンド | 「外国投資信託に関する届出」がなされていない海外ETF |
HODL | ヴァンエック ビットコイン トラスト | 「外国投資信託に関する届出」がなされていない海外ETF |
IBIT | iシェアーズ ビットコイン トラスト | 「外国投資信託に関する届出」がなされていない海外ETF |
2024年5月
- ブラックロックの ETF ( $IBIT )が最速で200億ドルに到達。
2024年6月
- グローバルスポットビットコインETFは現在700億ドル以上を保有
- BTC供給量の5%に相当
2024年7月
- ETFへの資金流入量が減少
- ビットコインの価格も大幅な下落
イーサリアムETFの経緯と現状
- イーサリアムETFもまた、ビットコインETFに続く形で提案され、現在に至るまでの経緯があります。
年 | イベント |
---|---|
2021 | イーサリアム先物ETFの提案が開始される。 |
2023 | ProSharesおよびVanEckのイーサリアム先物ETFがSECにより承認。 |
2024 | イーサリアム現物ETFの取引所の申請をSEC承認 |
2021年:先物ETFの提案
2021年、イーサリアム先物ETFの提案が開始されました。これは、ビットコイン先物ETFの成功を受けて、イーサリアム市場にも同様の金融商品を提供する動きです。先物ETFは、現物ETFに比べて市場操作のリスクが低いとされ、規制当局からの承認を得やすいと考えられました。
参考:VanEckとProSharesはイーサリアムETFの提供を中止
2023年:先物ETFの承認
2023年、ProSharesおよびVanEckのイーサリアム先物ETFがSECによって承認されました。これにより、投資家はイーサリアム市場にアクセスする新たな手段を得ることができました。先物ETFの承認は、イーサリアム市場の成熟度と規制の進展を示す重要なマイルストーンです。
参考:Ether futures ETFs from ProShares, VanEck and others go live
2024年:イーサリアム現物ETFの取引所の申請をSEC承認
2024年、米国証券取引委員会(SEC)はイーサリアム現物ETFの取引所申請を承認しました。
これにより、イーサリアム現物ETFは投資家が直接イーサリアムに投資する手段として提供され、市場へのアクセスが容易になりました。ETFの承認は、暗号資産市場の成熟と規制環境の進展を象徴しています。これにより、より多くの機関投資家や個人投資家が安全かつ効率的にイーサリアムへの投資を検討できるようになり、市場の流動性と価格発見機能の向上が期待されます。
参考:仮想通貨イーサリアムのETFへ前進、米当局が承認手続き
ビットコインETFとイーサリアムETFの承認状況
ビットコインおよびイーサリアムのETFの承認状況は、規制当局の動向と市場の成熟度によって大きく左右されます。ここでは、現在の承認状況について詳しく見ていきます。
ビットコインETFの承認状況
先物ETFの承認
ビットコイン先物ETFは、2021年以降に複数の金融機関によって承認されました。これにより、投資家はビットコイン先物契約を通じてビットコイン市場にアクセスすることが可能となりました。
現物ETFの承認
2024年1月10日、ビットコイン現物を運用対象とする11本のETFがSECに承認され、翌日から取引が開始された。取引初日には約7億ドルを集め、開始6日間で約9万5000BTCを保有するに至り、運用資産総額は40億ドルに迫っている。この動きにより、ビットコインETFは市場で大きな注目を集めた。
イーサリアムETFの承認状況
先物ETFの承認
イーサリアム先物ETFは、2023年にProSharesおよびVanEckによって承認されました。これにより、投資家はイーサリアム先物契約を通じてイーサリアム市場にアクセスすることが可能となりました。
現物ETFの動向
米SECは2024年5月24日、暗号資産イーサリアムの現物ETFの上場申請を初めて承認した。これは1月のビットコインETF承認に続く業界の重要な勝利となった。ブラックロック、フィデリティ、グレースケールを含む計8銘柄の19b-4フォームが全て承認され、これらのETFは「イーサリアム商品基盤の投資信託」と指定された。この動きにより、イーサリアムの市場に対する信頼と期待が一層高まっています。
参考:イーサリアム現物ETF、米SECが承認 ブラックロックなど8銘柄
ビットコインETF、イーサリアムETFの購入方法
2024年5月時点では、日本でビットコインETFは承認されておらず、日本の証券会社では取り扱っていません。そのため、日本国内の投資家が日本の証券会社を通じてビットコインETFを購入することは現状では不可能です。
なので、素直にビットコインを購入するのが良さそうです。
ビットコインの分析のETFの資金流入/流出量
- 資金流入と流出の監視: Bitcoin ETFへの資金流入(投資資金の増加)や資金流出(資金の引き出し)を追跡することで、市場の投資家心理や需要の変動を把握できます。大規模な資金流入はビットコイン価格の上昇圧力を示し、逆に流出は価格の下落圧力を示すことが多いです。
- 市場センチメントの指標: Bitcoin ETF Flowは、機関投資家や大口投資家の動向を示す重要な指標として機能します。これらの投資家は市場に対する影響力が大きいため、彼らの行動を分析することで、将来の市場トレンドを予測しやすくなります。
- ポートフォリオ戦略の調整: ETFの資金フローを参考にすることで、投資家は自身のポートフォリオ戦略を適切に調整できます。例えば、資金流入が増加している場合、ビットコインの追加購入を検討することができ、逆に流出が増加している場合はリスク回避のためにポジションを縮小するなどの戦略が考えられます。
ビットコインETFとイーサリアムETFの最新の状況
2024年5月
ブラックロックの ETF ( $IBIT )が最速で200億ドルに到達しました。
しかもグレイスケール(GBTC)を追い抜きました。
まとめ
仮想通貨市場は急速に成長し、ビットコインとイーサリアムが主要な暗号資産として注目を集めています。これらの資産にアクセスしやすくするための金融商品として、ビットコインETFとイーサリアムETFが導入されています。
ビットコインETFは、2013年にウィンクルボス兄弟の提案から始まり、多くの試行錯誤を経て2024年にようやく複数の現物ETFがSECに承認されました。
一方、イーサリアムETFも2023年に先物ETFが承認され、2024年には現物ETFが承認されました。
これにより、ビットコインとイーサリアムの市場へのアクセスが拡大し、投資家に新たな投資手段が提供されるようになりました。これらのETFは、市場の透明性と規制の強化を示すものであり、今後の仮想通貨市場の発展に寄与すると期待されています。
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