はじめに
三菱自動車の今後の株価の見通しを分析します。
三菱自動車の株価は、2021年に入ってから非常に強い上昇トレンドとなっています。これは、コロナウイルスからの経済の回復を見越した投資家の買いが入っているためと推定されます。
また米国の追加の経済対策への期待があると言えるでしょう。
そんな三菱自動車の今後の株価の見通しについて分析していきたいと思います。
三菱自動車とは?
三菱自動車とは、1970年に三菱重工業から独立した自動車メーカです。2016年に日産が筆頭株主となっています。
三菱自動車の強みは、SUV・4WD、電気自動車の開発技術と言えると思います。というのもこれらの技術の先駆者は、三菱自動車であったためです。例えば、世界で初めてプラグインハイブリッド車として住宅との相互電力供給が可能にした『アウトランダーPHEV』があります。
- 三菱自動車の強みは、SUV・4WD、電気自動車の開発技術
アウトランダーPHEV
三菱自動車は2008年に、リチウムイオン電池を採用した電気自動車の量産を世界に先駆けて開始しました。そして、2013年に販売開始されたのが、アウトランダーPHEVです。
このアウトランダーPHEVですが、実力の割に販売実績が伴っていないとの印象が私には、あります。これは、販売時期が少し早すぎたのではないか?というのが個人的な意見です。
以下のグラフは、世界の車種別の将来予測です。これを見ると、2013年には、ほとんど電気自動車関連の販売台数の見込みがないことがわかります。2020年から徐々に伸びていることがわかります。このことから、アウトランダーPHEVは少し早すぎたのではないか?と考えます。
三菱自動車の現状
三菱自動車の2019年度の売上・利益は、昨年比で減少傾向であると言えます。それを示すのが以下の表となります。唯一日本市場の売り上げが伸びているものの、他のセグメントでは全てマイナス成長となっていることがわかります。
そんな三菱自動車が、持続的な成長に向けコスト改革と収益力改革として、2020年07月27日に発表したのが、「Small but Beautiful」という新中期経営計画です。
「Small but Beautiful」
「Small but Beautiful」では、以下二点に重点を置いています。
- コスト改革
- 収益力改革
まずコスト改革では、2019年度比で、20%以上の固定費削減を目標としています。
参照元はこちらです。
具体的な施策は、以下6点です。
- 間接員労務費の削減
- マーケティング費用の削減
- 減価償却費の減損処理
- 開発費の削減
- 生産ラインの統廃合(パジェロ製造の生産停止)
- 一般管理費の削減
収益力改革では以下三点の技術戦略を提案しています。
- 次世代ディーゼルとフレームモデル性能の工場
- 次世代PHEVとHEVを軸とした電動化の推進
- アライアンス新技術の活用
三菱自動車の決算短信:2021年第3四半期
コロナウイルスの影響により非常に厳しい売上高となっています。
連結経営成績
2021年第3四半期2021年第3四半期は以下です。対前年同四半期増減率が-42.8%と非常に大きなマイナス成長となっております。
連結業績予想
連結業績予想も売上高が、対前年増減率で比較し、-35.7%の予想値と非常に厳しい数字となっています。
販売台数実績
これらの主要因は、販売台数実績の減少と言えるでしょう。昨年同期比で-35%の減少と非常に厳しい数字となっています。特に三菱自動車の主力市場であるアセアンの減少率の高さが懸念点として挙げられます。予想よりも低い回復率となっています。
アセアンは、三菱自動車の屋台骨とも言える市場です。
アセアン市場における三菱自動車のシェアは、2019年度は、約10%と非常に高い数字となっています。
三菱自動車のファンダメンタル分析
本年度の見通しが、赤字決算であることが懸念点でしょう。将来性に関しても、材料に欠ける銘柄かなとの判断です。
概要
三菱自動車は、PBR、PSRの観点からは、割安感のある銘柄となっています。
- 良い点
- PBR:0.8倍
- PSR:0.3倍
- 懸念点
売上・利益
売上が横ばい傾向でありましたが、21.3の見通しが下落でることが懸念点として挙げられます。また、利益に関しても、赤字決算見込みで見通しは悪いです。ただし、1074億円は、減損処理で赤字計上したものなので、注意しましょう。
- 懸念点
- 売上5y CAGR・予想:-6.5 %
EPS/BPS・配当・健全性
- 良い点
- 自己資本比率は横ばい
- 懸念点
- EPS:マイナス
- 配当:0円
三菱自動車のテクニカル分析
日足チャート
2020年12月に5,25日移動平均線のゴールデンクロス後から上昇トレンドに転じています。
そして、2021年2月に大きく上昇し、200日移動平均線を上に抜けました。
2021年2月24日現在は、300円付近でもみ合いの展開となっています。
- 移動平均線
- 青線:5日移動平均線
- オレンジ線:25日移動平均線
- 緑線:75日移動平均線
- 赤線:200日移動平均線
MACD
MACDは非常によく機能しています。2021年2月2日に買いシグナルが出ています。2月19日に売りシグナルが出ています。
RSI
RSIは80を超えて下落に転じました。2021年2月24日現在は、70付近で遷移しています。
ボリンジャーバンド
2021年2月3日にエクスパンションし、大きく株価をあげました。その後3σ上限に沿う形でバンドウォークし、現在は、ミッドバンドに支えられるかどうかの展開となっています。
現在は、非常にボラティリティが高い状態であると言えるでしょう。
一目均衡表
一目均衡表は、現在三役好転中です。
週足チャート
下落トレンドを抜けて、現在は、上昇トレンドに転じるかどうか?という状況です。2021年2月の第1週の大陽線が大きく52週移動平均線を上に抜けました。
2020年の12月13週移動平均線が上にブレイクしてから、状況が変わりつつあります。
- 移動平均線
- 青線:13週移動平均線
- オレンジ線:26週移動平均線
- 緑線:52週移動平均線
月足チャート
ここ4ヶ月は、非常に取引量が増えてきています。特に12ヶ月移動平均線を上に抜けたのが、2018年以来です。やっと上昇トレンドに転じるかどうかの大事な局面と言えます。
- 移動平均線
- 青線:12ヶ月移動平均線
- オレンジ線:24ヶ月移動平均線
さらに長期での株価の推移を確認していきましょう。
このグラフは、2001年からの三菱自動車の株価を示しています。
三菱自動車は、2001年から現在に至るまで下落トレンドであることがわかります。
以下のグラフの青い線がレジスタンスラインとして機能しており、まずは、このレジスタンスラインをブレイクできるかどうかが大切なポイントとなります。
競合他社との比較
直近5年間の競合他社との株価の推移を比較した結果が以下です。三菱自動車のパフォーマンスは最も悪いものとなっております。
- 7211:三菱自動車
- 7203:トヨタ自動車
- 7261:マツダ
- 7267:本田技研
- 7269:スズキ
- 7270:SUBARU
- 7201:日産自動車
直近5年の年間利益率
三菱自動車の年間利益率は、競合他社と比較し、最も悪いものとなっています。
- 三菱自動車:-18.5%
- トヨタ自動車:8.7%
- マツダ:-9.7%
- 本田技研:3.5%
- スズキ:12.6%
- SUBARU:-8.0%
- 日産自動車:-8.4%
年間利益率の算出方法に関しては、以下の記事を参考にしてみてください。
直近5年の年間利益率のリスク
リスクについてももっとも悪い結果となっています。
- 三菱自動車:0.42
- トヨタ自動車:0.23
- マツダ:0.37
- 本田技研:0.29
- スズキ:0.35
- SUBARU:0.31
- 日産自動車:0.31
年間利益率のリスクの算出方法に関しては、以下の記事を参考にしてみてください。
三菱自動車のトレンド分析
トレンド(黒線)から三菱自動車は、下落トレンドであることがわかります。
シーズナブル(緑線)からは、夏と年末年始に価格を上昇させる傾向があることが分かります。こちらは、-40から30円のレンジでの推移となっています。
トレンド分析結果
コレログラム
コレログラムに特に特徴は確認できませんでした。
トレンド分析による今後の株価推移予想
トレンド分析からは、下落トレンドの継続が予想されます。現在の株価は、外れ値になっており、急激な下落の可能性があります。注意しましょう。下落リスクは、100円付近までの可能性があり、非常にボラティリティが高い状況です。
三菱自動車のモンテカルロ・シミュレーション
直近5年分の株価の推移
直近5年間は、200〜800円のレンジで推移していることがわかります。2018年から2021年までは下落トレンドとなっています。
- 横軸:日付
- 縦軸:株価
直近5年分の対数利益率の推移
2020年からボラティリティが高い状況が継続しています。現在は、あまり投資するべき時ではないでしょう。
三菱自動車の利益率の遷移の特徴として、下落のスパイクの高さが高いことが挙げられます。急激な株価の下げには、注意しましょう。
- 横軸:日付
- 縦軸:対数利益率
モンテカルロ・シミュレーション
モンテカルロ・シミュレーションからレンジは、45〜630円で、平均値244円で推移することが予想されます。
- 横軸:日数
- 縦軸:株価
1年後の株価のヒストグラム
100〜200円に最頻値が存在します。あまり、リターンが望める銘柄ではないでしょう。
- 横軸:株価
- 縦軸:度数
- ave : 215 円
- min : 50 円
- max : 489 円
まとめ
三菱自動車の今後の株価の見通しを分析しました。
今後電気自動車の需要が高まることが予想されており、三菱自動車の強みであるSUV・4WD、電気自動車の開発技術が活かされる可能性があると言えます。
しかし、それが売り上げに直結するかは、別問題です。現在の三菱自動車の状況に鑑みるに売り上げが伸びてきていないのは懸念点です。特にアセアン市場において、どのように立ち回り、さらなるシェアを広げるのか?という観点が大切だと判断します。
短期投資
なしと判断します。
理由は以下3点です。
- これまでの短期的な上昇が強くその理由は市況による影響が大きいと考えられるため
- MACDは売りシグナルのため
- RSIも高い水準で推移していため
長期投資
なしと判断します。
理由は以下3点です。
- 長期足で下落トレンドを脱していないため(月足チャートを参照のこと)
- ファンダメンタルが厳しい状況
- モンテカルロシミュレーションからも投資利益が見込めないとの予想のため
投資に関してもっと知りたい、投資を始めてみたいという方は、こちらの記事も参考にしてみてください。口座開設の方法やおすすめの証券会社について解説しています。
今回の記事は、以上です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
コメント